初めまして。安住だいちと申します。売れてない漫画家です。代表作は『最愛の隣の悪夢』で単行本全2巻発売中! 基本的にオタクです。
私は旅の漫画も描いたことがあるほど旅が大好きなのですが、そのきっかけは国民的ゲームのドラゴンクエスト! ピコピコ電子音とカクカクドット絵でどこまでも広がる世界にワクワクさせられまくったものです。
大人になって趣味が広がると、猿岩石やあいのりに影響されてバックパッカーデビューをしたのですが、その時に気付きました。
ひとり旅はまるで、ドラクエのリアルバージョンみたい!!
お金を貯めて村から町から移動して、町の人の話を聞いてはまた移動して……。世界は救えないけれど、人々の営みを肌で感じる経験値は本物ではないか?
そんなことを考えている私ですが、先日インターネットの波間をさまよっていたら、中野にある「YADOYA GUEST HOUSE」で宿泊客みんなでディナーを食べるという、会心の一撃級に楽しそうなイベントを発見!
しかも会場の名前はYADOYA。宿屋だと?
そんなHPが回復しそうなネーミングにグっと心を捕まれ、ポチっと予約をしたのでした。
中野のYADOYAは人種のるつぼだった
ということで、待ちに待った宿泊の日がやってきました。
中野駅南口の郵便局を左折して歩いてくと、道沿いのガレージセールの上に看板を発見!
ドアを開けると東南アジア系イケメンに声を掛けられるも、流暢な日本語を話す日本人スタッフでした。綾瀬はるか似のスタッフは日本語のイントネーションが少し不思議で、尋ねるとトリリンガルの台湾人で、日本滞在6年目だそう。パッと見でどの人に言葉が通じるのか分からない、まさに人種のるつぼです。
このYADOYA GUEST HOUSEは2002年にオープン。開店時の日本では、ゲストハウスと呼ばれる宿泊施設はほとんど無かったそうです。
新宿まで電車で5分の便利な立地にも関わらず、周辺の宿泊施設は中野サンプラザとこのゲストハウスだけで、需要は大いにあるご様子です。連日業務が山積みで、お客さんに「それ取って」てな感じで手伝ってもらっているうちに、宿泊費無料で滞在できるボランティアスタッフというシステムが定着したそうな。
では各施設をご案内しましょう。3階建ての1階はレセプションとキッチン。
2階にはシャワールームと客室。
泊まったお部屋では見事なドローイングがお出迎えしてくれて、
こんなかんじの構造になっていました。
今夜の寝床は二段ベッドの上段です。
トイレは各階に設置してあり、壁に描かれているかわいいイラストはYADOYAのマスコットキャラのタヌドン!
大にぎわいの鍋パーティが開始!
さて、どうやらお目当てのディナーパーティの時間が来たようなので、会場の1階へ行ってみましょう!
キッチンもやっぱり人種のるつぼ。色んな人たちが準備してくれてました。
本日のメインは、白菜と豚肉を交互に並べたミルフィーユ鍋!
白菜と人参と油揚げで煮込んだベジタリアン向けメニューも。毎回2種類用意しています。このあたりが、多様な人種が集まる場所ならではの配慮ですね。
通常の献立は、各スタッフの出身国の料理を披露しているそうです。今回は作り手が一巡したため、クックパッドからこの鍋がリクエストされました。節分には恵方巻き、ひな祭りにはちらし寿司を作るらしく、季節感もバッチリ!
そうこうしているうちに続々と人が集まってきます。宿泊客以外でも500円払えば参加OKなので、毎週来る常連さんも多いとか。
ここでザックリと本日の参加者をご紹介!
- TOEIC満点の日本人女性
- スペイン旅行帰りの会社員
- 言語学を勉強中のイタリア人
- トリリンガルの中国人
- 外国語話せない韓国人
- NOVAの先生
- 中学英語の先生
- 台湾と日本のハーフで見た目は東アジア人なのにドイツ国籍のボランティア
- 多摩美の学生でオタクなノルウェー人
はい、何度も言いますが人種のるつぼです! ノルウェー人とはブロードウェイの「同級生」展の話で興奮し合いました。
とあるスタッフさん曰く「ここでは日本人と外国人とで分けるというより、台湾人、カナダ人、ポーランド人などそれぞれの出身のひとつに日本人がいる感じ」とのこと。その通りだなあ……としみじみ感じました。
そんな中にひときわ年配の、英語が堪能な日本人がいらっしゃいました。尋ねてみると、なんとこのYADOYAのオーナーさん! これはチャンスと思い、いつからパーティを始めたのか聞いてみました。
そもそものきっかけは5年前の東日本大震災と、意外にも最近の話でした。当時ゲストハウスに宿泊していたお客様は、他の国ではありえないほどの揺れを体感したうえ、公通網は麻痺、インフラも不安定になり、それぞれの国に帰国しようにも欠航が相次ぎ、大使館の通達は悲観的なものばかり。錯綜する情報に不安を募らせたといいます。
確かにあの時、自国で自宅にいる日本人の私でさえ、明日をも見えぬ怖さを感じました。そのうえ言葉も通じず、自分の国にいつ帰れるか解らない状況に陥ったら、その心細さは尋常ではないでしょう。
そんなお客さん達の気持ちに寄り添い、家族とまではいかずとも、一緒に食卓を囲めたら少しは不安が和らぐのでは……。
そこで感じた思いから、宿泊客みんなで夕食を囲むイベントが始まりました。それから5年、毎週火曜日は一度も休まずパーティは継続し、参加者もどんどん増えて大盛り上がり!
そんなこんなで宴もたけなわな22時頃、集合写真をパチリ!
終電を気にしないご近所組はその後も留まり続け、片付けが終わるとお開きに。喋り疲れましたが、すごーーーく楽しかった!
祭りのあとの静かな語らい
パーティの後、歯を磨こうと思って先程まで盛り上がっていたキッチンに行くと、女性がひとりで晩酌していました。
パーティではお話しなかったような……?と思って尋ねてみると、少し前まで出掛けていた同室のお客さんでした。
彼女は遠路はるばる関西から、10-FEETというバンドのライブを観に関東にやって来たそう。「ライブ好きには、音楽フェスは天国みたいな所なんですよ!」と切り出した彼女は、フェスの話を楽しく熱く語ってくれました。
なにより、フェスは旅とセットになるとのこと。関西から北海道へ行くときは舞鶴港からフェリーで移動し、フェス期間中の宿泊先には同じ目的のお客さんが集まるので、別れ際には「来年も会おうね!」となるのだそう。いいなあ……そんなの楽しくないわけがない!
そんなこんなで気が付くともう深夜の2時過ぎ。はしゃぎまわったひとときも終わり、満室のドミトリーに戻って就寝です。おやすみなさーい!
旅人の魅力いっぱいの「宿」でした!
それにしても、濃厚な半日間でした。オーナーさんにはYADOYAの名前の由来も聞いていたのですが、「“宿”という古くからある日本語を、世界の人に伝えたい」とのことで、ドラクエの影響は無かった模様です。これだから私のようなゲーム脳は……。
外国語に触れたい、国際交流したい人にはピッタリのディナーパーティと、宿泊場所として穴場な中野で、長期滞在やボランティア制度が充実しているYADOYAゲストハウス。
地方在住者の安価な1泊にも、非日常を感じたい関東人にも、超オススメなゲストハウスですよ!