初めまして、さわけんと申します。先日弟に子供が生まれ、とうとう本物の「おじさん」になってしまいました。嬉しいやら悲しいやら、複雑な毎日です。
さて、初めましてのご挨拶代わりに今回皆さんに紹介するのは、和歌山県にある世界遺産「熊野古道」です。耳にしたことはあるけど行ったことはない……そんな人が多いのではないでしょうか?
11月にちょいと歩いてきましたので、そのときの話をしたいと思います。
熊野古道ってなんなの?
最近テレビでも紹介されることが増えてきた熊野古道。その歴史は古く、なんと1000年も前の平安時代からある道なのです!
この道、一体なにかと言いますと、神々の宿る聖地「熊野三山(くまのさんざん)」へと続く信仰の道のこと。その字の通り熊野三山とは三つの山で、三つの大きな神社(大社)を表します。それぞれの神社が離れた場所にあるので、この熊野古道は一本の長い道ではなく、いくつもの道の集合体のことを指すんです。
サッカー日本代表のユニフォームにプリントされている三本足の黒いカラス・八咫烏(ヤタガラス)は、ここ熊野では神の使いとされ、その三つの神社でも特別扱いをされています。
熊野古道は巡礼路(参詣道)として世界遺産に登録されていますが、スペインにあるキリスト教の巡礼路も世界遺産として登録されています。宗教は違えど道そのものが価値あるものとして共通点を持つことから、姉妹道として提携しています。
ということで、歩いてきました
今回は、前述したいくつもの道のなかで最も一般的な「中辺路(なかへち)」という道を歩いてきました。スタート地点は滝尻王子と呼ばれる小さな神社になります。
滝尻王子までは、東京からなら高速バスで紀伊田辺というところまで行き、そこから市営バスに乗って行くことができます。大阪からなら電車で2時間あれば紀伊田辺まで行けます。
滝尻王子に到着。ヨッシャ行くぜ!
歩き始めるといきなり急な山道が続きますが、真っ暗な岩の中を進む「胎内くぐり」や白い乳が流れたという伝説が残る「乳岩」などの見所も続々と現れます。
途中の展望台を過ぎたあたりからは下り坂が伸び、ラクチンになっていきます。あまり山歩きをしない人でも、このあたりまで来れば気持ちよくなってくることでしょう。
そろそろお腹が空いてきたな~という頃、高原熊野神社の近くにある「霧の郷 たかはら」でお昼。冬の山で冷えた身体を暖炉で温めて待っていると、きれいに盛り付けられたランチが到着! 特製ソースがかかったハンバーグ定食はコーヒーが付いて980円とリーズナブルでした。山の景色を見ながらいただく味は格別です。
その後も歩き続け、近露王子(ちかつゆおうじ)という場所まで来たときには夕方4時過ぎで、陽が落ちかけていました。ゴールの熊野本宮大社まではとても1日で歩ける距離ではないので、今日はこの近露王子で宿を取ることにしました。
冬山の日暮れは早く、しかも突然です。出発が遅くなりそうな人は、日の入り時間のチェックとヘッドライトの準備をお勧めします。
泊まった民宿では、この地で捕れた「あまご」という魚を食べさせてくれました。うーん、うまい。
ヒノキの香りが立ち込める温泉にも入り、足の疲れを癒します。明日の道をチェックしているうちに、疲れから来る気持ちのいい睡魔に襲われて、そのまま寝落ち……。最高です。
道中で見つけたお気に入りスポット
翌日もひたすら歩き続けるわけなんですが、その全てをお伝えするとキリがないので、この2日間で気に入った場所を紹介します。
リアルなカカシ
道中にはホンモノの服を着たリアルなかかしが急に現れたりしてけっこうビビります。夜は歩きたくありません。女性(?)のかかしにキレイな葉っぱを捧げましたが、無視されました。
継桜王子(つぎざくらおうじ)
二本の樹と鳥居がマッチした、とても雰囲気のいい場所です。
湯川王子(ゆかわおうじ)
かつて法皇や貴族が宿泊した場所で、近年も皇室が訪れています。石には八咫烏が刻まれ、凛とした空気が張り詰めています。
発心門王子(ほっしんもんおうじ)
熊野の御子神の分社である王子のうち、特に格式が高いと言われている5カ所の王子のうちのひとつ。熊野本宮大社へは2時間で着くので、ここから熊野古道を歩き出す人もいます。
熊野本宮大社に到着
高い樹木の森の中を縫うように歩き続け、とうとう熊野本宮大社に到着しました! やはり規模も雰囲気も普通の神社とは格が違います。「大社」と付くだけあります。
この2日間を無事に歩き終えたお礼を神様にしたころ、ちょうど夕暮れがやってきました。かなり疲れましたが、その分とても気分がいいです!
ちなみに、熊野古道にはチェックポイントのようなスタンプ台が数百メートルごとに設置してあります。押印帳にスタンプを押していくのも楽しく、スタンプラリーが好きな人にはおすすめです。中辺路を踏破すると和歌山県知事から証明書が発行されるようですよ!
熊野古道を歩けば外国人の友達が作れる
ところで現地で聞いた話によると、熊野古道を歩く人の8割は外国人だそうです。あちこちに和の心が息づく熊野古道が外国人の興味を惹きつけるようで、オーストラリアや、熊野古道の姉妹道があるスペインから来る人が特に多いのだとか。
僕は道中に出逢ったスコットランド人のエミリーとしばらく一緒に歩きました。彼女は日本に来るのが初めてなのに、なんとトーキョーでもヒロシマでもなく熊野古道を選び、歩きに来たそうです。しかもひとりで。英語しか話せず日本語も読めないのに、よく和歌山の山奥まで来れたなあ。
そんな彼女との会話から気が付いたのですが、この熊野古道にはほとんど英語の案内がありません。彼女のように日本語が読めなかったりすると、道が分かり辛くて迷ってしまうようです。
名所旧跡を解説した看板もほとんど日本語だけ。世界遺産に選ばれて外国人が多く歩きに来ている道である以上、もう少し彼らに親切にしてあげると、更に多くこの地に訪れてくれるのでは……と思います。
とにかく、意外にも国際交流ができる場所であることは事実。彼らとただ一緒に歩くだけでも、一生忘れない友人と思い出ができるような気がします。
まとめ&こんな人に向いています
深い緑に包まれ、1000年の歴史を踏みしめながらひたすら進むこの道は、正直ラクな場所ばかりではありません。急な登り坂はしんどいし、長く続く下り坂は膝にくるし、大きく迂回させられることもある。ケータイの電波が弱い場所もあるし、天気が崩れる可能性だってある。
それでも、ふと景色が開ける道に出たとき、清らかな川の澄み切った水の色を目にしたとき、山の中で食べる食事の美味しさに気付いたときには、大変だったコトを大きく上回る爽快感が得られます。エミリーも、じっと杉の木を見上げたまま立ちつくしていることがありました。きっとうまく言葉にできないなにかを感じ取っていたのでしょう。
世界遺産に選ばれる場所には、選ばれるだけの理由があります。山の奥地でひっそりと人々を待つパワースポット・熊野古道は、「普通のハイキングには飽きた」とか「自然の中でゆっくりしたい」という人にはぴったりの場所だと思います。あなたの次の旅行先にいかがですか?