こんにちは、ダイビングに興味がないのに沖縄に来てしまったあきらです! この時期でも暖かいと思っていた沖縄でしたが、残念ながら寒いです。
さて今回は、この沖縄で出会ったひとりのおばあさんのことをお話ししたいと思います。小さな食堂を切り盛りするそのおばあさんは、頼んでもいない料理をたくさん出してきたりなど、やたらとサービスをしてくれます。
そんなおばあさんの不思議とも思える愛情に触れた私は、自分の日常に対する考えをちょっぴり改めてみたりするのでした。
ディープすぎる「ゲンキ食堂」にたどり着く
はい、ということで沖縄観光が始まりました!
とりあえず定番の首里城に行ってきたのですが、そこでたくさん歩いて腹ぺこになった私。どうせ何か食べるならローカルな食堂がいいなと思い、那覇市内にディープな食堂がないか調べてみました。
そうしてたどり着いたのがこちらのお店、ゲンキ食堂。
うん、深いです。
営業しているか定かではない外見に「入っていいものだろうか?」と不安がよぎります。しかし開いたドアは私を誘っているようにも感じました。
思い切って入ってみると、昭和から時間が止まったままのような光景が広がっています。
店員はおばあさんが二人で、座っているおばあさんは私が入ってきても無反応。どうやら耳が遠いようです。
「あのーすいません、お店やってますか?」
と大きな声で聞いてみると、
「ああ! ちょっとまってさぁー、天ぷらいくつ食べる?」
と奥にいたおばあさんが有無も言わさず天ぷらの数を聞いてきました。他の選択肢はないのかなと思いつつ、流れにまかせて天ぷらを4つ頼むことにしました。
出てきた天ぷらがこちら。本土のそれとは違って、衣が分厚くフリッターみたいです。外見からは何が入っているかまったくわかりません。
中身は魚でした。味からしてマグロのようです。他にはイカの天ぷらもありました。衣に味がついていて、醤油をつけなくても十分味がします。スナック感覚で食べられる天ぷらでした。
みそ汁を頼んでみたら……
ちょっと口が油っぽくなったので汁物が食べたくなりました。壁のメニューにみそ汁を見つけたので注文します。
「す・い・ま・せ・ん! みそ汁ください!」
とやや大きめ声でオーダーします。
「おにいさん、ちょうどよかったね。いつもは手が塞がっていたら注文断っていたさー。でも今空いたからつくるさー。」
なるほど、タイミングを見計らわないと料理が食べられないタイプのお店のようです。
なにげなく周りを見渡すと、時計や食器はみな骨董品クラスの物ばかり。しかしどれも現役で使用されている模様です。
非日常感の強い空間で、ここはどこなのか、自分はなぜこの場所にいるのか、不思議と解らなくなってきます。
そんなふうにぼんやりしていると、調理場から焼いたり揚げたりする音が聞こえてきて、ふと我に返りました。
(あれ?なんで焼いたり揚げたりしてるのかな?頼んだのはみそ汁だったはず。)
そして気が付けば、食卓はみそ汁と見たことない料理で埋め尽くされていました。
「あのぉー」と言いかけた瞬間、「たんと食べるさぁー」と、おばあさんは笑顔で私に言います。
黄色い人参や、みそ汁の具になっている見たことない菜っ葉など、沖縄独自の食材がたくさん。何か試されているのかとも思えましたが、とりあえず食べてみました。
どれも優しい味付けで、外食特有のはっきりとした味ではありませんが、どこか癒しを感じる不思議な料理でした。そういえば沖縄料理には中国の「医食同源」と同じ「クスイムン」という知識があると聞きます。これがそうかもしれませんね。
いつのまにか家で過ごすような雰囲気に
出された料理はサーターアンダギー以外なんとか食べれましたが、満腹で一歩も動けません。なので、しばらくお茶を飲みながらおばあさんとお話してみました。
宮城祠(みやぎはる)さん
沖縄が本土に復帰する前からこの場所で食堂をしている。80歳くらい。
まさかこんなに料理が出てくるとは驚きました。
内地の人はおなかすいているかなあと思って、張り切って料理を出すのよ。
いつもこれぐらいの量を出すのですか?
いつもこれぐらいかな。ねーね(沖縄弁で女性の意味)には少なく出してるよ。
それにしても、沖縄のおばあさんは元気でよく働きますね、私の祖母なんて何もしていませんよ。
今日も市場で怒られたよ「おばぁは家で遊んでろ!」ってね。でも辞められないのよ。ずーっとしてることだから、何もしなくなると頭が呆けてしまうのが怖くて。
本土のお年寄りより元気で驚いてます。
そんなことないよ。おばあは本土の人が出来ることもできないさー。
何ができないのですか?
電車に怖くて乗れないさー。
沖縄モノレールも乗ったことないのですか?
んだ。あんなの怖くて一度も乗ったことないさー。いつも歩いて行けるところしか行かないさー。
遠くに行く用事ある場合はどうするの?
孫が車にで連れてってくれるさー。
そんな話をしていると沖縄美人の若いお孫さんが「おばぁ元気にしてる?」とやってきました。「行きたいところはないか?」などと聞いて「友達の家に遊びに行った後、夕方に顔を見せるからね」と言って彼女は去って行きました。最近の若者とは思えないぐらい年寄りを大事にしています。昭和の家族のような懐かしさを感じました。
その後、もうひとりお客さんが来て仲良く会話を楽しみました。おばあは他人に対してもお孫さんと変わりなく接します。そこにはもはやお店ではなく、「家庭の食卓」がありました。
しばらく和やかな雰囲気を堪能し、食べきれなかったサーターアンダギーを包んでもらって帰りました。何だか「ゲンキ食堂」の名の通り、元気になった気がします!
おばあの愛に触れ、自分の日常を思い直す
宿に戻ったあと、食べきれずに持ち帰ったサーターアンダギーの包みを開けたところ、1個だったはずのものが3個に増えていました。おそらく包むときに2個もサービスしてくれたのでしょう。
それを眺めながらゲンキ食堂のことを思い返してみました。サービスは嬉しいのですが「これはちょっとやりすぎじゃないか?」と思えて素直に喜べない自分がいます。500円の食事代では過ぎた内容です。こんな儲けの無い商売であのおばあはやっていけるのかと、余計なお世話かもしれませんが心配になりました。
そして、なぜ会ったばかりの他人にそこまで優しくできるのだろうか。あれはおばあにとっての仕事じゃなく、愛の一種なのではないだろうか、などと考えてみました。
それが本当かどうかは定かではありませんが、サーターアンダギーを頬張りながら、「つまらない日々の仕事やあれこれを自分なりに愛してみよう。」なんてことを思っている私がいました。
今回の沖縄旅行では、おばあとの出会いを通し、普段考えないことを思い起こす「気付き」があったように思います。